
2014年の秋、仙台・通町にスタジオを開いた二人に、はじめの一歩のこと、踊りと見せ方のこと、これからのことを聞きました。
仙台市青葉区、通町。ソシアルダンスカンパニーオガワは、2014年の秋に小川芳信さんと沙織さんが開いたスタジオです。今も競技会のフロアに立ちながら、教室では「はじめての一歩」をいちばん大切にしてきました。運動をしたことがない人も、パートナーがいない人も、70代から始めた人も通う教室。二人に話を聞きました。
見学や体験にいらっしゃる方の不安と、はじめてのレッスンのこと。
沙織 「ダンス教室に入ったことがないから、どんなところか分からなくて怖い」という声はよく聞きます。あとは「何を着ていけばいいか」「何を履けばいいか」。来ていただければその場でご説明しますが、最初の不安はやっぱりそこみたいですね。

沙織 まったくはじめての方は、マンボから。少し経験のある方はブルースから始めて、ワルツなどへ進みながら、どのくらい踊れるかを見ていきます。
沙織 大丈夫です。絶対にできますよ。
芳信 絶対にできますね。楽しく。
沙織 無理はさせませんし、音楽があるので、簡単なステップを音楽に合わせて何度も繰り返すところから始めます。実は、運動をほとんどしたことがない生徒さんのほうが多いんです。「こんなに運動しているのは今が初めて」という方がたくさんいます。
沙織 うちは、パートナーのいない方がひとりで通ってくださることがとても多いんです。学生さんも、ひとりで来て「いつかカップルを組めるといいね」と話しながら、ずっと通い続けてくれています。
沙織 いちばんの違いは、お一人のためだけに時間を使えるかどうかです。うちの団体レッスンは人数が少なめで、お一人ずつ見るようにしていますが、個人レッスンはそのぶん、ご自分にかけられる時間が多くなります。
沙織 70代で、まったくはじめてダンスを始めた生徒さんがいます。最初はブルースだけだったのが、3年ほどたった今では、スタンダードもラテンもほとんどの種目を踊って、デモにも出ています。デモは一組ずつ踊るものなので、それをこなしているのは本当にすばらしいと思います。
はじめてでも、ひとりでも。小川沙織
運動が苦手でも、大丈夫です。
社交ダンスを始めたきっかけと、二人で組んだ日のこと。
沙織 もともとジャズダンスをやっていました。社交ダンスには、ワルツ、タンゴ、スロー、ルンバ、チャチャ、ジャイブ……と、ひとつのダンスの中に音楽の種類がたくさんある。それに興味を持ったのが始まりです。
芳信 親が社交ダンスの先生でした。でも自分はあまり興味がなくて。親のパーティーにスペシャルゲストでラテンダンサーが来たとき、「こういうダンスならやってもいいかな」と思って、ラテンから始めました。

芳信 サンバです。音楽がとにかく楽しくて、リズミカルで、乗りやすい。
沙織 チャチャです。音楽のキレがよくて、リズムがはっきりしているところが好きです。
芳信 前のパートナーと別れたあとに、彼女が来たんです。「この子は踊れそうだな、育てればなんとかなるかな」と思って組んでみたのが、今に至ります。
沙織 私は誘われて始めたんですが、組む前に大きな競技会を見に連れていってもらって、とても感激しました。ドレスはそれまでやっていたダンスの何十倍も華やかで、髪型もすごくて。ジャズダンスは舞台の上で前を向いて踊りますが、社交ダンスはフロアのあちこちを回転しながら踊る。それがとても新鮮で、やってみようと思いました。
沙織 プロになるつもりで社交ダンスを始めたわけではありませんでした。うまくいかないことのほうが多かったけれど、あるとき一般の方のサークルに連れていってもらって、みなさんが「難しいけど楽しい」と踊っている姿を見たんです。自分の教室を持って、自分たちのコミュニティを作っていくことに、面白さを感じました。
芳信 団体レッスンなど、自分でいろいろなことをやっていきたいと思っていたときに、ちょうど教室を引き継げるお話があって。二人でやってみようと。
沙織 彼はとにかく人に教えるのが好きなんです。教えた人が変わっていく姿を見るのが楽しい、と。だから自分たちの場所を持ってやっていこう、という気持ちでした。
今も競技会に出て、東京へ学びに通う理由。
沙織 たくさんあります。私は基礎を一から積み上げる前に、プロとしてすぐ競技会に出ることになったので、とにかくたくさんレッスンを受けて、いろいろな先生のお話を聞いてきました。その引き出しが多いので、生徒さんがつまずいたときに「これは前に自分が言われたことと似ているかも」と思い当たる。ピンポイントでお伝えできるのは、競技をやってきたからだと思います。
芳信 僕も最初からうまくいったほうではなく、できないことのほうが多かった。だから、できない人の気持ちがよく分かるようになりました。
沙織 私ができなかったことが、そのまま彼の教える材料になっているんです(笑)。私のつまずきは、生徒さんのつまずきと同じなので。
芳信 教え方は、相当うまくなりました。

芳信 楽しいですね。
沙織 大変ではないです。学んで、試して、また練習して。その繰り返しが楽しいんです。学んだことは、はじめての方から競技選手の方まで、教室でお返しできますし。仙台と東京くらいの距離なら、もう慣れました。
沙織 東北は6県それぞれで、前期・後期と競技会があるので、回数がとても多いんです。アマチュアの部もあります。東京の方には「試合が多くていいね」とうらやましがられます。チャレンジしたい方には、とてもいい環境だと思います。
沙織 仙台には、プロの先生と気軽に踊って遊べる場所がなくなってしまいました。それなら作ろう、と宮城のプロの先生方と協力して始めたのが「いきダン」です。月に一度、チケットで好きな先生と40分ほど踊って楽しめる会です。「いきなり」は宮城の言葉で「たくさん」。たくさん、生き生き踊ろう、という意味を込めました。
今はラテンの会もあり、年に一度、気軽な価格のパーティーも開いています。リハーサルなし、ぶっつけ本番の「いきなりデモ」もあるんですよ。
私がつまずいたことが、小川沙織
そのまま、教える材料になっている。
踊りと見せ方のこと。沙織さんに聞きました。
沙織 社交ダンスは、見られることがそのまま踊りにつながっていて、メイクにもつながっています。私が舞台に立っていたころ、お客さまは前にしかいませんでした。でも社交ダンスは、まわりをぐるりと囲まれて、どこからでも見られる。だから、見られている意識が自然と身につくんです。

沙織 いちばん多いのはパーティーの日です。ヘアのサポートやメイク、最近はドレスのリフォームのご相談も増えました。始めてみたら「私も」「私も」と声がかかって、みなさんこんなに悩んでいたんだ、と驚いたくらいです。おしゃべりしながら支度ができるのも、喜んでいただいています。これからも、生徒さんの「困った」に寄り添っていきたいです。
沙織 大きく変わるのは「ごあいさつ」です。フロアへの出ていき方や、お辞儀の仕方。講習会でも教室でもお伝えしていて、学びたいという方が多いんです。学ぶ前と後では、あいさつがまったく違います。見よう見まねだったものが「これでいいんだ」と分かって、自信につながるんだと思います。
沙織 猫背などの癖は、そのままにして年齢を重ねると、ダンスをしていてもいなくても、いつか体のどこかに負担が出やすくなります。私は自分でもトレーニングをしているので、2〜3分でできる軽いストレッチや姿勢のトレーニングを「まずはこれを1週間」という形でお伝えしています。ダンスと一緒にこういうことをするといいんだ、という話はなかなか聞けない、と言っていただきます。
沙織 人に相談しにくいことや、「こんなこと聞いていいのかな」という悩み。ダンスを続けるうちに出てくる迷い。うちでは、それを言えないということは一切ないと思います。私たち自身がたくさん失敗してきて今があるので、どんなことでも、たいていはお答えできます。
教える楽しさと、これからの教室のこと。
沙織 できなかったことが、できるようになったとき。それが音楽に合ってきたとき。人前で踊るという目標に向かって一生懸命練習して、「できた」という顔を見たときが、いちばんうれしいです。
芳信 僕もそうですね。笑顔を見ているのが楽しいです。

沙織 組んで踊るので、決まりごとが意外と多いんです。全部分からないと踊れないわけではないけれど、分かったほうが踊りやすい。だから一度に全部お伝えするのではなく、これができたら次はこれ、と少しずつ進めていきます。
沙織 若い世代の方も増えてきました。競技会やプロアマの舞台を見て、興味を持ってくださるようです。上は(年代を確認中)の方まで、みなさん元気に通っていらっしゃいます。
芳信 今日も元気に来ていましたね。
沙織 ホームページを作るために駅からの道を歩いて写真を撮ってみて、気づいたんです。バスも通っているし、地下鉄もJRもある。思っていたより、ずっと通いやすい場所でした。
芳信 駐車場もありますしね。
沙織 車でも来られる。生徒さんからは、駐車場があるのがいちばん助かると言われます。
芳信 これから始める方は、絶対に今より姿勢がきれいになるし、運動が楽しいと思えるようになります。いいことしかないと思います。
沙織 社交ダンスは、運動のなかでいちばん敷居が低いと思うんです。運動したことがない人が「ジムに行こう」と思っても、なかなか気が進まないですよね。でも社交ダンスなら、運動が苦手な人も得意な人も、自分のやりたいことに合わせて楽しめる。こんなに振り幅の広いダンスは、なかなかないと思います。
沙織 これからいろいろな情報を出していって、「私でも行けるかも」と思えるメニューをたくさん揃えたいです。「私ならこれ」と選べて、いろんな方が気軽に出入りできる教室に。敷居が高いと思われず、ちょっとしたときに「行ってみようかな」と思ってもらえる場所にしたいですね。
芳信 アットホームな教室にしたいですね。
沙織 実は、ほとんど休みがないんです(笑)。競技会にパーティー、自分たちのレッスン。毎日がお祭りみたいなものです。
芳信 あとは、ジムで筋トレをしたり、体のケアをしたり。
沙織 少しでも時間が空いたら、おいしいものを食べに行きます。宮城は海も山もあるので、今の季節ならはらこ飯。車を少し走らせれば旬のものが食べられて、お米も野菜もおいしいんですよ。
これから始める人には、小川芳信
いいことしかないと思います。

JBDF(日本ボールルームダンス連盟)認定・優良認定教室 ソシアルダンスカンパニーオガワ代表。社交ダンスの先生である両親のもとに育ち、ラテンからダンスを始める。2026年 全山形 前期・後期 優勝(小川沙織と)。好きな種目はサンバ。プロと踊れる会「いきダン」代表。

ジャズダンスから社交ダンスへ。競技ダンサー。2026年 全山形ダンス選手権 ベストドレッサー賞。社交ダンスのメイク、ヘアのサポート、ドレスのご相談まで、踊る人の支度をトータルで支える。好きな種目はチャチャ。